「ミャンマー辺境地域を行く」その2―カヤー州―
2013年1月16日
カヤー州はタイと国境を接し、ミャンマーの観光地インレー湖に接する小さな州で、その約半分は少数民族武装勢力カレニー民族進歩党が支配する地域である。12月3日午前9時30分にヤンゴンの宿舎を出発し、シャン州のHe-Ho空港に12時30分に到着。そこから車で約6時間。カレニーの首都Loi Kaw(ロイコウ)の政府ゲストハウスに到着したのは、日が落ちて暗くなった午後6時30分であった。
少数民族武装勢力地域の訪問については、事前にミャンマー政府に旅程を通告することになっている。今回も提出したところ、宿舎の政府ゲストハウスとは何かとの問い合わせがあり、当方担当者を慌てさせた。それもそのはず、私は武装勢力カレニー民族進歩党の最高幹部の一人である幹事長との会談に訪れたにもかかわらず、州政府のゲストハウスを宿舎にしたからである。
はからずもミャンマー政府がこれらの現場の状況を把握していない実態の一部が明らかになってしまった。2012年6月の停戦以来、カレニー民族進歩党の最高幹部である副議長(議長は空席、副議長が事実上のナンバー1)を除いて、ミャンマー政府側の地域に比較的自由に往来しており、政府ゲストハウスも彼らの依頼に州政府が了解したのであった。
ちなみに、ナンバー1は今回の私たちの訪問に際しても暗殺を恐れて顔を見せなかった。まだまだ緊張関係は続いている。
ゲストハウスでの夕食を終えた後、「秘密警察もいるから、大切な話は場所を変えて我々の事務所で行いましょう」と、政府ゲストハウスから地続きで6~70メートル先にある武装勢力側のリエゾンオフィス(連絡所)での会談となった。このリエゾンオフィスは少数民族武装勢力、一グループにつき3ヶ所、ヨーロッパの資金で建設された簡素な平屋の施設で、資金の乏しい武装勢力側が、政府との交渉のため2~3日もかけて政府側地域に出てきた時の宿舎兼会議室に使用されていた。私を出迎えてくれたカレニー民族進歩党の最高幹部の一人も、タイ国境より2日間をかけてLoi Kaw(ロイコウ)に出向き、ここを宿舎としていた。