―新モン州党―その4

11月24日、午前5時起床、7時、新モン州党最高責任者の議長と会談した内容は前回アップした。

その後、8時頃より国内避難民施設を視察。通常、テレビで放映される難民キャンプにはテントが並んでいるが、この地域は避難してきて既に5~6年が経過しており、粗末とはいえ木造作りの一軒家が多く、中には小規模だが耕作地を保有する農家もあって、貧しいながらも何とか生活しているという状況であった。

 

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セパタクローで遊ぶ避難施設の子供達



ただ、病院は木造の平屋で、20床程の木製ベッドにはマットも敷かれておらず荒れはてた状態。入院患者は一人もいなかった。医師もおらず、一人いた看護師の女性は「医薬品もほとんどなく、医師・看護師は勿論のこと、最低限の医療施設の必要性が喫緊の課題です」と訴えた。

 

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荒れ果てた病院

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病院内部を視察



9時、昨日難行を極めたジャングルの道なき道を戻ることになった。

本当にあの道を戻れるのか?
不安に思うだけでなく、思い出すだけでもぞっとする風景が脳裏をかすめる。しかし、昨日ぬれ鼠になった軍服に威厳を正す兵士たちの立居振舞いには気合が入っており、5台の車両の荷台に各々5人の武装兵士が立ち、勢いよく出発となった。

出発して9時間、走行は往路より復路のほうがさらに難渋を極め、豪雨の中、岩場や深く削られた泥土の轍(わだち)に車両はたびたび立ち往生。そのたびに荷台の兵士は激しい雨に打たれて急速に体温を奪われる厳しい条件の中で、車両から飛び降り、持参した鍬でほんのわずか、車両の幅だけ固い土を掘り起こし、車両の前進に努力する。

 

鍬で進路を確保.JPG
鍬で進路を確保



竹林のトンネルのような間道は、豪雨を集めて川の急流のようになってきた。出発して9時間、午後6時には日没となり、激しい豪雨に視界も不良。この道を何十回、何百回と往復しているベテラン運転手のこれ以上進むのは危険との助言で、行軍は停止と決心せざるを得なくなった。

幸い、谷川を横断した直後だったので、兵士が手分けして宿舎の確保に走った。私が車中泊を覚悟して眠りに入っていたところ、同行の森祐次より窓をたたかれ、宿舎の寺が借りられ夕食の用意も出来たので移動するようにとの指示。真っ暗闇の中、懐中電灯に照らされた足元の草地は、靴の中までどっぷり水につかった。

ロウソクの灯がかすかに揺れる寺の中では、すでに兵士を含めた同行者が板の間に車座になって食事を始めるところだった。寺といっても屋根があるだけの広間で、壁面は奥の仏像が安置されているところを含め、片側だけである。

大盛りの飯に野菜炒め、豚肉の煮込み、それに魚の缶詰。豪雨の中、兵士たちが横断した谷川に近い茶屋まで戻り入手してきたらしい。与えられた食事をロウソクの灯の下で兵士たちと共にもくもくと口に運ぶ。賓客?の私たち一行に対する彼らの気の遣いようは涙ぐましいものがあった。

 

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ローソクをたよりに兵士と共に夕食



食事が終わると兵士は濡れた軍服を脱いで私服となり、中にはミャンマーの民族服であるスカートのような「ロンジー」を巻いている者もいる。食器は手際よく片づけられ、湿った衣服のままでの雑魚寝となった。客人の私たちにはコンクリートの上にゴザが敷かれ、蚊帳二張りが支給されたが、兵士たちは蚊帳なしの雑魚寝である。主賓の私には写真のようなピンクの蚊帳付きの台座のある和尚用のベッドが用意された。和尚は所用で留守であったが、私は無断で借用すれば罰が当たるのではないかと考え、ベッドを同行の某氏に譲ってゴザの上で寝ることにした。蚊帳は3人は入れそうな広さなので、私と森祐次、吉田鈴香女史の三人で川の字になって寝ようと冗談半分に提案した。しかし「鈴香御前」の愛称のある吉田鈴香より鄭重に断られてしまったので、仕方なく森祐次と二人で寝ることになってしまった。

 

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和尚の蚊帳付き寝台



私は長年の癖でうつ伏せで寝るのが習慣である。しかし枕はなく、どう頭を動かしてもおでこか頬(ほお)のどちらかにゴザの網目を感じてしまい、寝付くのにしばしの時間が必要だった。

夜中、森祐次の懐中電灯を借りて50メートルほど離れた野外の扉のない便所に行く。雨は上がっていたが虫の音もなく、暗闇の中で谷川の流れる音だけが聞こえてきた。兵士たちは、エジプトのミイラのように足元まで布をしっかり巻いて一様に上を向いて熟睡しており、あちこちで音程の異なるいびきが協奏している。

一番鳥が鳴いたので森祐次に声をかけたら「午前3時です。起床は5時です」と注意され、兵士の寝姿をまねて上向きで寝ることを試してみたが、あちこちから聞こえるいびきの協奏に耳を取られているうちに起床の時間を迎えた。

慌しく蚊帳をたたみ、持ち物の整理が終わったところでふと兵士たちに目を向けると、奇妙なことに、壁を背に両膝を抱えるようにしてしばらく動こうとしなかったが、やがてボスの命令で一斉に濡れた軍服に着替えて出発の準備に取りかかった。

和尚愛用の特別ベッドを使用した某氏に
「夕べはよく寝られましたか?」と声をかけると、
「さすが笹川さん。何かを感知してこのベッドを私に譲ってくれたのでしょう」とニヤリと笑った。
「そんなことありませんよ」と弁解すると、某氏笑いながら
「昨夜は大変でした。夜中に急所に痛みが走ったので懐中電灯を持って外に出て照らしてみたら、急所の先の方に黒いホクロのようなものがあって、摘んでみると虫だったのです。えらい目に合いました」
「それは大変でした。多分、3~4日後に急所は3~4倍に腫れ上がりますよ」
「脅かさないで下さいよ。顔や手足は虫よけスプレーを使ったんですが、急所にも必要なんでしょうか?」と、真面目な某氏の一言で大笑いとなった。
(つづく)

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